点点主義

モギケン一座、新印象派をみる。
  • モギケン一座
  •  座長●茂木健一郎
  • 団員1●恩蔵絢子[聞き書き]
  • 団員2●植田工[絵解き]
植田工氏 点描作品制作ルポ  新印象派に挑戦!
モギケン一座の絵師、
植田工くんが新印象派の画家に倣って描いてみます。
どこから描いていくのか、
どの絵具から置いていくのか、
色が増えて、間を埋めたり、重なりあったりして、
絵ができていく様子を
段階的に見せてもらいましょう。
さあ、新印象派の絵になっていくか、見守ってください。
第1回
風景画はハードルが高い気がするので静物画でチャレンジです。静物画と言えば、そうです、りんごです。今回はりんごをモチーフにしてみます。赤いりんごが一つだけだと画面の中に彩りが足りなくなるのではないかな?ということで、黄緑のりんごも用意します。
市販の下塗りされているカンヴァスをそのままでもいいのですが、今回はアクリル絵の具で描くので、新印象派で使われている油絵具に比べると透明感と色の濃度は少し落ちると予想されます。
アクリル絵の具の発色の効果を上げることにもつながりますし、点描は下にある色が最後までチラチラと見えてくるだろうということも踏まえまして、念のために、白い下地を薄く二層ほど塗っておきます。
さて、いきなり絵具で描いたほうが絵の勢いはよさそうですが、今回は進めて行く過程をご披露しつつですので、形や構図を決めるのにあっちこっち行ったり来たりしたら恥ずかしいので、小心者の私は鉛筆で下描きをしておきます。小さな円卓の上にりんごが二つと、要素はいたってシンプルです。ハハイのハイっと。まあ、このくらいでいいですかね。
全体をどういう風に描き進めたらいいのか、ちょっと考えます。まずは、それぞれの物をそれぞれの固有色で塗り分けてみようと思います。固有色の中には光の階調がありますから、ここもシンプルにまずは明・中・暗と三段階で考えてみます。暗い色を一番下の層の色にして、さらに、その部分の補色を塗ることにします。初めに赤いりんごを塗ってみます。赤の補色は緑ですので、緑を点点します。一応りんごの影もりんごの延長線で緑で点点します。はい。
続きましては黄緑のりんごです。黄緑のりんごを見ていると、なんとなく黄色にも寄っても見えますし、うっすら赤味があるようにも感じます。黄緑の補色は紫で、黄色の補色は青紫です。紫だと赤すぎる気がするので、青紫の色を塗ってみます。と、あれれ、ちょっと赤みが無さ過ぎたかもしれません。細かいことは気にせず前に進みます。
次の机は茶色です。茶色は橙か黄橙あたりの明度が下がった色です。黄橙ー青か橙ー緑青という補色関係ですので、茶色には明度の下がった青系の色を選ぶのがセオリーですし、今は明・中・暗の暗の色を描いているのですが、ここをあえて、逆に明度の高い水色で点点してみます。これがこの先に吉と出るか凶と出るか、どうなるのでしょうか。
背景の色をどうするか考えます。さてどうしたものでしょう。只今のところ、緑、青紫、水色と置かれています。だんだんと補色関係を考えるのも億劫になってきますが、ここは耐えどころです。背景はグレーですが、最終的には青味がかった空気感を演出したいと考えていますので、橙色で攻めてみます。点点点点点点・・・・・っと。ひとまず、画面の中に物の色の塊のような状況は出来ました。うーん、机の色を他の色の調子から外してしまいましたので、ちょっと色の対比がわかりづらくなってしまいました。りんごとりんご、りんごと机、りんごと背景、机と背景、など色の組み合わせの関係を整理して次へ描き進めます。

茂木健一郎(もぎ けんいちろう)

1962年生まれ。脳科学者。ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。専門は脳科学、認知科学。『脳と仮想』で第四回小林秀雄賞を受賞。著書多数。

聞き書き

恩蔵絢子(おんぞう あやこ)

1979年生まれ。脳科学者。
上智大学物理学科卒業後、東京工業大学大学院にて脳科学を学び博士号修得。博士(学術)。

絵解き

植田工(うえだ たくみ)

1978年東京生まれ。東京藝術大学絵画科油画専攻卒業、東京藝術大学大学院美術解剖学(布施英利研究室)専攻修了。株式会社オリエンタルランドにてインハウスデザイナーとして勤務し退職後、脳科学者・茂木健一郎氏に師事しながら、アーティスト、アートディレクターとして活動。

構成

鈴木芳雄(すずき よしお)

1958年生まれ。編集者、美術ジャーナリスト。
慶應義塾大学卒業。愛知県立芸術大学客員教授。2010年3月までブルータス副編集長を10年間務める。主な仕事に「奈良美智、村上隆は世界言語だ。」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「緊急特集 井上雄彦」「仏像」など。共編著に『チームラボって、何者?』

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